☆1

4/20
前へ
/79ページ
次へ
「千華? 何で俺の席に座ってんの?」 「あ、やっと来た! 話があるから着いてきて」 そう言って可憐を無理矢理引っ張って連行しだす女は、片瀬 千華(かたせ ちか)である。 彼女とも幼なじみで、昔からの付き合いでフレンドリーな関係である。 「千華ちゃんも恋愛相談?」 「えっ‥ 何で分かったの?!」 「亜子もさっき相談してきたから、後で調査する予定。 それで千華ちゃんは相手誰なの?」 「柳垣先輩」 「雪兎先輩か。 なるほどね」 可憐はまたも納得したように頷くと、千華は真面目な顔でこう言ってきた。 「雪兎先輩って… 彼女らしき人いるって噂に聞いたけど、デマだと思うの」 「嫌、居たんじゃないかな? 先輩はあのルックスだしね」 「そ、そっか… やっぱり綺麗な人が好きなのかなぁ」 千華は自信をなくしたように弱気にそう呟くと、可憐は千華の頭をポンと撫でた。 「大丈夫だよ。 千華は可愛いし、美人だよ」 「ホント?」 「あぁ。 亜子と千華は昔から可愛いよ」 可憐がそう言うと、千華はニッコリ笑ってギュッと抱きついた。 「ありがとう、可憐」 「俺、先輩ね?」 「可憐くん、ありがと」 「まあ、雪兎先輩にも会ったらそれとなく聞いとくからさ」 「うんっ」 千華はそう言うと、満足げに可憐を中庭に残して教室へと戻っていった。 「千華も亜子も青春だな」 可憐がフッと微笑み立ち竦んでいると、後ろから犬みたいに何者かが抱きついた。 「流、引っ付くな」 「可憐、はよっ」 「武蔵、流を剥がしてくんね?」 「俺も抱きつくから、流退け」 武蔵はそう告げると、流を引き剥がし自分も可憐に抱きついた。 「武蔵!」 「可憐、抱きやすいな」 「変態発言やめろ、馬鹿」 「可憐のこの小ささが好みだな」 「武蔵は身長タケーから狡いけど?」 「可憐はこのサイズで大丈夫だ」 「気にするだろ、男なんだから」 「女の子になるとか?」 「離れないと、痛いよ?」 「可憐の為なら… 火の中、水の中、ベッドの中まで飛び込めるからな」 「いい加減にしろ」 可憐はそう告げると、武蔵を背負い投げして引き剥がして先に教室へと歩いていってしまった。 「武蔵、大丈夫か?」 「可憐、強し」 「アイツ、空手に柔道やってたしな」 「可憐はやはり男にしておくには勿体ない可愛さだな」 「懲りない奴」 流が武蔵の粘り強さに呆れている中、校舎内に入った可憐は男装している真尋に足止めされていた。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加