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「麻生、これ運ぶの手伝ってくんないか?」 「安達先輩… それホントに重いの?」 「見て分かるだろ?」 真尋がそう言うと、可憐は両手いっぱいの分厚い本を見てこう言った。 「仕方ないですね? 半分だけだよ」 「ありがとうな、麻生! 何か奢るよ」 「イチゴミルクで手を打ちますよ」 「飲み物まで可愛いな」 真尋はそう言うと、可憐に半分持たせて図書室まで歩き出す。 「ありがとうな、麻生」 「図書室に用事あったからいいっすよ」 「イチゴミルクだったな」 「そーですよ」 可憐がそう言うと、真尋は自販機でイチゴミルクのボタンを押して手渡した。 「ありがとう、安達先輩」 「こちらこそありがとね」 「じゃあ、俺は本を」 「ちょっと待って」 「?」 可憐が図書室へ足を運ぼうとすると、真尋はグイッと腕を引っ張る。 「な、なんすか?」 「ふぅーん? やっぱり君は可愛い顔してるね」 「安達先輩まで何言い出すんですか!」 「嫌、俺はちゃんと男だって思ってるよ」 「それより、また男装してるんですね?」 「えっ? もしかして、知ってたの?」 「安達先輩って俺よりちっこいし、何となくですけど…」 「誰にも言うなよ」 「秘密って事ですね?」 「うん。 麻生なら分かってくれるだろ」 「イチゴミルク、また奢ってくださいね」 「取引成立だね」 真尋はそう言うと、可憐の手を離して図書室から去っていった。 「変な先輩」 「誰が変なの?」 「あっ… 雪兎先輩、おはようございます」 可憐がビックリしたようにそう言うと、雪兎はニッコリ笑っていた。 柳垣先輩も仲良しの先輩なんだけど、この人は俺をちゃんと男として見てくれてる。 「真尋がなんかした?」 「いえ… ただ‘可愛い顔してる’って言われたぐらいで」 「可憐くんは男の子だけど、人を惹きつける魅力があるんだよ。」 「惹きつける魅力?」 「君は確かに可愛いし、格好いい。 でも勘違いしちゃうのは君の香りのせいかもね?」 「香り? なんか匂うんすかね」 「うん。 甘い香りがする」 可憐はそれを聞き、思わず自分の服の匂いや髪なんかを嗅ぎ出す。 可憐は匂いを嗅いだが、いつものシャンプーの香りぐらいしかしない。 「何も匂いしないっすよ」 「他人にしか匂いわかんないよ、きっとね?」 「わかんないなら対処できないっすよ?」 「確かにそうだね? でもきっと誰かと付き合ったら匂いは薄れるよ。」 雪兎がそう言うと、可憐は思いついたようにこう聞いてみた。
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