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「あ、悪い! 怪我してないか?」 「は、はい。 大丈夫…?!」 「あ、亜子」 「な、流くん?」 「やっぱり亜子だった」 「え?」 「メイド喫茶でバイトしてるだろ?」 「う、うん」 「そーだ。 メアド訊いていいか?」 「え?」 「あ、ごめん。 亜子彼氏とか居るよな? ごめんな」 「…居ないよ?」 「え?」 「彼氏なんて居ない」 「そ、そっか。 でも俺とメールとか嫌だよな」 「な、何で? 嫌じゃないよ」 「本当に?」 「うんっ」 亜子は可愛い笑顔で微笑むのだから、流は亜子の腕を引っ張ると無意識に抱きしめてしまう。 「な、流くん?」 「…亜子、彼氏居ないって本当?」 「うん。 居ないよ?」 「じゃあ、俺と付き合って」 「え?」 亜子は流の突然の告白に呆気に取られていたが、ギュッと抱きしめられてハッとなる。 「な、何で?」 「亜子が小さい頃から好きだから」 「ほ、本当に?」 「じゃないと、すぐに亜子だって分かんないだろ?」 「う、うん?」 亜子は真っ赤になりながら腕の中で頷くと、流は腕を緩めて亜子を体から離した。 「ごめん。 返事は待つから、考えてくんない?」 「考えないよ」 「へっ?!」 「だって、私も流くんが好きだもん」 「へっ? それ、マジ?」 「私も小さい頃から好きだよ」 亜子が真っ直ぐな言葉をぶつけると、流は力が抜けたのか項垂れていた。 「な、なんだよ。 俺ら両想いだったんだな」 「流くん、返事は」 「亜子、目瞑って?」 「え?」 亜子はいきなりそんな風に言われて戸惑ったが瞳を閉じると、流の手が顔に触れて唇が優しく触れた。 「亜子、好きだ」 「…な、流くん? 今何したの?!」 「ムードぶち壊すなよな?」 「だ、だって…」 「キスしたんだろ、普通に考えて」 「ふ、ふぅん?」 亜子が他人事みたいにそう告げると、流はまた不意討ちなキスをしてやる。 「亜子、生意気」 「だって、流くんが必死で可愛くて」 「んで、メアド教えてくれんの?」 「仕方ないな、流は」 「呼び捨てすんな、馬鹿」 「じゃあ、教えてあげないよ?」 「わ、わかった。 呼び捨て許すから教えて」 「ふふっ」 亜子は楽しそうに笑うと、流とメアドを赤外線送信して交換したのだった。 「ごめんな、武蔵? やっぱり机にあるかも」 「可憐、ちょっと今から話いい?」 「授業始まるけど?」 「すぐ終わるから、頼むよ」 「わかった」 可憐は何となく必死な武蔵を見ると、断る事は出来なかった。
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