People who gather

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 フェニックスは、すっと真顔になった。  「首相が屈したのは、盗聴した通りよ。その後は、回鶻衆の連中に殺{バラ}されたけれど」  非日常の言葉を躊躇なく口にした暗躍組織の女は、腕を組んで溜息を吐く。  「不可解この上ないわね。首相を抹消したところで、朔磨には何の利益もない筈よ」  「寧ろ、朔磨に跪く首相の図があった方が、心理戦略には向いていますね」  眼鏡を押し上げて述べる白峰は、云霞に目を移した。  「その辺り、どうなんですか?」  云霞は肩を竦める。  「俺に訊かれても分からないよ。本来の朔磨とは反対の方向に動いてるなぁ、とは感じるけど、その真意なんて分かるわけがないさ」  「そうね。朔磨の行動はノイズだらけだわ。別に中途半端なわけでは、ないのだけどね」  「中途半端で言ったら、俺たちの方がよっぽど中途半端ですぜ」  安っぽい悪役のような語尾で言ったビアズリーに、高良が苦笑と共に同調した。  「集う理由が、てんでバラバラだしな。若ぇのは若ぇ連中同士で動いてくれや、とも言えねぇしよ」  そもそも、この面子で集えたことが、賞賛に値するのだ。  彼らはそれぞれ、衝撃の夏へと思いを馳せた。
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