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『高良櫂吾! 神部博史!』
ブラウン管の中、突然の神永朔磨のアンドア社社長就任会見の場は、騒然となっていた。
神永朔磨が襲撃を受けたにも拘らず、人間離れした力で、その襲撃犯を押し返しているせいだ。
横倒しの画面に走り込んできた“はぐれ卍”の声は切迫し、背後ではマスコミの悲鳴と朔磨の悪魔を思わせる高笑いが響いている。
『見ているか!? 今すぐ来てくれ! この場所は───』
ブツッ!
唐突に映像が途切れ、画面は砂嵐になった。
「な………」
神永道場で、朔磨の実父たる喜朗{よしろう}と会っていた博史、白峰、ビアズリーは、愕然と立ち尽くしていた。喜朗もまた、呆然として砂嵐の画面を見つめている。
耳障りな静寂が打ち破られたのは、直後のことだった。博史の携帯電話が鳴り響いたのである。
「も、しもし!」
動揺したまま応じた博史に、弟の声が届く。
『兄貴、テレビ見たか!?』
「櫂吾か! あぁ、見た。お前もか!?」
『ああ、勿論だ。いいか、兄貴。落ち着けよ。今から、俺の信頼する女と電話を換わる。彼女の指示に従え。いいな!?』
「あ、あぁ」
入院している高良からの突然の電話に、驚く余裕もなかった。
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