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『もしもし?』
高良から換わったのは、アルト音域の女声だった。やけに落ち着いている。
『貴方が、神部博史?』
「は、はい。そうですが」
『落ち着いて、よく聞きなさい。貴方、今どこにいるの?』
「か、神永道場です」
『なら、まずはすぐにそこを離れなさい。仲間なり家族なりが一緒なら、連れていくのよ、いいわね? もし神永喜朗が一緒なら、彼は置いて行きなさい。質問、反駁は受け付けないわ』
冷静な声音に、博史の頭が徐々に落ち着きを取り戻す。
「分かりました。しかし、その後どうすれば?」
『落ち着いてきたわね。はぐれ卍は、わたしの仲間が動いているから、貴方はとにかく逃げなさい。場所はどこでもいいから、とにかく神永朔磨の行動領域から離れるの』
「しかし、他の方々は?」
『他の方々は他の方々でどうにかするでしょう。貴方は神永朔磨に近しい立場にいたのだから、逃げなさいと言っているの。今は従いなさい!』
博史は送話口を手で塞ぎ、ビアズリーと白峰を振り返った。
確か喜朗は、あまり英語が得意ではなかった筈だ。
博史は、ビアズリーと白峰に英語で話し掛ける。
「すぐにここを離れる。私についてきてくれるか?」
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