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ただならぬ事態であることは、テレビが訴えていた。白峰もビアズリーも何も言わずに頷いた。
博史は通話に戻る。
「分かりました。櫂吾のことは、貴方に任せていいですね?」
『ええ、任せて頂戴。はぐれ卍の方も。……健闘を祈るわ』
そこで電話は切れた。
博史は、呆気にとられている喜朗には適当な言い訳をすると、2人を伴って道場を後にした。
最も安全な場所として彼らが選んだのは、都内のホテルだった。
博史は一室を急遽借りると、すぐに高良の携帯にかけ直した。
この間に、フェニックスは暗躍組織の力量を充分に発揮して、高良の外出許可を取り付けていた。高良の携帯にかかってきた博史の電話を受け、途中で連絡をとったメイウェザーと共に、ホテルに直行したのである。
はぐれ卍は、朔磨との苦戦を強いられていた。
ただ掌を向けられただけで、突風にさらされたような衝撃に吹き飛ばされ、彼らでは全く歯が立たない。
「はぐれ卍も、所詮は人間に過ぎんか」
朔磨は満足げに笑い、傍らのキユは毒々しく微笑んでいる。2人は無傷で、息も荒げていない。
そもそも、はぐれ卍が朔磨に近づくことすら出来ないのだから、当然である。
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