行列

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いつものように、高校へと向かう最中だった。 目の前に今まで見たこともないような数をひきつれた人間が歩いている。 おかげで引き連れている奴はまったく見えない。 尾が9つに割れた狐。 真っ白な狼。 狐の面をかぶった人。 あとはとにかくたくさんの狐だらけだ。 そのどれもが真っ白な毛並みをしていて、まるで描いたかのような狐の嫁入りの風景だ。 「何だ…これ………」 その行列が通ったあとにポトリと何かが落ちている。 拾い上げてみれば、小さな小さな金の扇子だ。 届けるべきか…。 しかしあまりかかわりたくはない。 なにせこの数を引き連れているからにはただ者じゃあないのは承知である。 「はぁ……」 仕方ない。 落としたら大切なもんだったらもっと面倒だ。 俺は小走りで先頭を歩く人間に意を決して声をかけた。 「…これ。落としただろ?」 「え……!?あっ!!ありがとう!!!これ…どこに?」 「後ろ歩いてたら落ちてた」 「ほんと…助かったよ」 「いや…別に。じゃ」 「なんかお礼…」 「いらないから」 面倒に巻き込まれたくない。 『あやつ…主(あるじ)の礼を断ったぞ?』 『生意気な人間だのぅ…喰ろうてやろうか』 『いや…儂が呪ってやろうぞ…』 『いや…我が…』 『我が…』 すぐ後ろで声がした。 独特の周波数の声達。 未だに慣れなぁ響きにため息をついた。 『テメェら。手出したらぶっ潰すからな。約束守れねぇなら帰れ…』 ゾクリと鳥肌が立った。 気づいた時には振り返ってしまった。 ヤバいと思ったが後の祭り。 バッチリ目が合ってしまったのだ。 「……ど…どうしました?」 「いや…何でもない」 鳥肌がまだ収まらない。 朗らかに微笑むが、何だかおかしい。 笑顔がおかしい。 何がと聞かれても明確な答えはでないが…。 「あの……」 「「キャーッ!!!志摩さんが登校してるーっ!!!」」 呆気なくも校門前の女子生徒によって俺たちの会話は強制終了した。
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