💠それでも君だけを愛してる💠

新生活と夢

そして、３階の華の部屋の前に着くと風香は荷物を降ろしてため息をついた。

「あのね…、モジャ。」

「なぁに？」

突然、華は気まずそうに下唇を噛んだ。
こういう表情をするときの彼女は、決まって予定とは違う発言をする時だ。
風香は、目をくるりとさせてあきれ顔で華を見た。

「何？」

トゲのある風香の声に、少しだけ怯えながら華は口を開いた。

「あのね…風香には悪いんだけど、あたし彼氏いるんだ。」

風香は耳を疑った。
女って、これだから厄介だ。
また、風香は目をくるりとさせて腕を組んだ。
華は、そういう風香の恐い態度が苦手だった。
でも、風香には事実を告げなければならない。

「あたし、彼氏と同棲中なの。」

「それで？」

無表情で拷問のように問い詰める風香を見て、華は顔を引きつらせた。

「そ、それで…実は、彼氏は…。」

そう華が言いかけると、突然華の隣の部屋の玄関のドアが開いた。

「華…。お友達はまだ？…って、あれ？もう着いたんだ？」

そう言うと、背が低い男が風香に握手を求めてきた。
風香は、「コイツ誰？」と言わんばかりの顔で、仕方なく背の低い男と握手を交わした。

「あのね、彼があたしの彼氏。竜生（リュウセイ）。」

「どうも～。竜生です。」

気さくな竜生が、風香にニコリと笑いかけると、華は風香にこう告げた。

「今は、あたし竜生と半同棲中だから、あんまり自分の部屋にもどらないんだよね。だから、ほぼモジャ一人暮らしだけど…いい？」

華が不安そうにそう言うと、風香はなぜかホッとした。
なぜなら、風香は華とのルームシェアに正直自信がなかったからだ。
でも、一人で気楽に東京暮らしを満喫できると思うと、逆に嬉しかった。

「なぁ～んだ！そういうことか！てっきり、同棲中の二人の愛の巣に一緒に住まわされるのかと思ったよ！そうじゃないなら、安心だ！ムカついて損したわ！」

風香がケラケラ笑うと、竜生と華は顔を見合わせてぎこちなく苦笑いした。

そして、竜生と華に荷物運びを手伝ってもらい、作業が済むと風香は一人になった。
風香が東京に来た理由。
それは、会いたい人がいるからだ。
風香にとって、その人は人生の中でなくてはならない存在だった。
その人を追うと決めた時、彼女は心に決めたのだ。
なんとしてでも、見つけ出そう…と。