💠それでも君だけを愛してる💠

新生活と夢

風香の間抜けな声が部屋中に響き渡ると、玄関のドアを開けたその人は悪だくみな笑顔で彼女に顔を近付けた。

「俺、部屋間違えたっけ？」

そう言って余裕の笑みを浮かべる彼に、風香はパニックを起こしそうになった。
彼は、今通路で女とキスしていた変態だったのだ。

「近寄らないで！変態！」

「おいおい…。誰が変態だって？」

憎たらしい笑顔で彼が風香の頬に手を当てると、風香は彼の親指を勢いよく噛んだ。

「イッテェェェェェ！！！」

変態の悲痛の叫び声に、隣の部屋から竜生が金属バットを持って慌ててやって来た。

「竜生君！助けて！この変態が、私を襲おうとして…。」

風香がそう言って、竜生の背後に隠れると、竜生に続いて隣の部屋から飛び出した華が変態を見て口を開いた。

「春樹（ハルキ）！！！」

華が痛そうに手を押さえている変態に近寄ると、変態は風香を涙目で睨んだ。

「誰が、襲うか！こんなピンクのメッシュが入った変な格好の女！！！」

恨みたっぷりの目で言う変態に、風香の怒りは収まらなかった。

「誰も襲ってくれって頼んでないもん！変態！！」

「誰が変態だって？！この、小汚い小娘！！！！」

「うるさい！変態！」

風香と春樹が言い合いをしていると、竜生が気まずそうに口を開いた。

「まぁまぁ。二人とも落ち着いて…。実はな、ここ華の部屋なんだけど、半年前からコイツが住んでるんだ。」

竜生が申し訳なさそうに風香を見ながら、春樹を指さすと訳を知っているような顔をした春樹が風香を睨んだ。

「ルームシェアの相手ができるって聞いて、しかも相手は女だって言うから楽しみにしてたのに、こんな発育の悪い女だとは…。」

春樹が風香の小さな胸を退屈そうに見ると、華が春樹の頭をポストに入ったまんまの新聞で叩いた。

「はい！退屈そうに女のシンボルを見ない！！」

そう言って、春樹の頭を新聞で更に２発叩いた。

「こんなんで、シンボルって言えるかよ？」

鼻で笑う春樹に、風香は自分のけな気な女のシンボルを隠した。

「最低！」

そう吐き捨てるように言うと、風香は部屋にこもってしまった。

「可愛い…。」

春樹が優しい目をして微笑むと華は春樹の頭をまた叩いた。