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砂漠越え
「……暑い」
刺すような日差しをベールで遮りながら、足場の悪い砂地を歩く私。
首に巻ていた長めのベールを頭に被り、長いベージュの髪を大きめのクリップでアップにして留めて少しでも体の熱を逃がそうと試みる。(あんまりかわらん!)
そして、ノロノロとした動きで辺りを見わたした。
辺りは砂、砂、砂。自分が今、東西南北どこへ向かっているかも分からなくなりそうな視界。
「…やっぱりラクダさんとか借りて置けばよかった…隣町のくせに遠いのよルタ町!」
…無謀だった…とてつもなく…。後悔の念が脳内を渦巻いたが、照り付ける太陽熱に一気に思考は真っ白。
その場にへたれこんでしまいたいが、砂は直接触れたら火傷してしまいそうなほど熱くなっていて、座るに座れず、ただただその場に立ち尽くすしかなかった。
「はぁぁ…こんな時、どこぞの紳士が"大丈夫ですかお嬢さん"とか、素敵に助けてくれないかなぁ…」
なんて、そんな都合よく人など…
「大丈夫か?君」
……現れた。
驚いて声の方を振り返ると、そこには齢17、8才?私と同じくらいの歳かしら?髪は肩口くらいの黒髪で、こんなに強い日差しの元にいるのに、肌はとても白くて…髪の奥のエメラルドの目がとても綺麗な男の子。彼はラクダの上から此方を見つめていた。
「…これは…蜃気楼?」
だってタイミングが良すぎやしませんか?これは私の妄想なんじゃないかしら?
私はパチクリと目をさせて相手を見つめる
その様子を見つめ若干、間を開けたのちなんとなく私の心情を察したのか、乗っていたラクダから降りて此方に近づいてきた
「…はは!蜃気楼なんかじゃない。ちゃんと生身の人間だ。それより君こそ蜃気楼じゃないだろうな?」
彼は困ったような顔で私に問いかける
「えっ私が?私だって蜃気楼じゃないわよ!ちゃんと生身の人間よ!!」
私は若干プリプリしながら彼に返答した。
それを見て彼はそのようだなすまない。と申し訳なさそうに謝る
「でもまさか女性がこの砂漠をラクダにも乗らず歩いてるから、もしかして…と思ってしまって…それにしてもよく無事にここまで来られたな?」
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