休日の過ごし方

2/4
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/417ページ
   目を覚ますと古めかしさが際立つ窓が アラームの役割をする。窓は横に三つ に区切りのある薄い曇りガラスでカタカタ と音を立てていた。その音で外の風の強さ を感じさせた。毛布と安さを感じさせる 羽毛の詰まっていない掛け布団。だが 温かさには問題はなく逆に寝汗をかいて しまった。長袖シャツの首周りはひんやり と湿っていた。 時太郎は冷え切った部屋を暖めようと 石油ファンヒーターのスイッチを押した。チッチッチと 点火音を立てブゥッと火が着き暖かい風が 部屋を着実に温めていった。12月に入り 気温がより一層下がるのを体で感じ させる。この季節は寝床から出るのが辛く なる。時太郎の住んでいるアパートは 築年数が大分経っている。その所為か至る所に老朽化を見せる。 視覚的にも寒さを感じさせた。時太郎は ファンヒーターの前でテレビをつけた。朝のニュースを 観るためだ。世界では様々な事件が 起きている。事件の一つひとつに記憶しな くてはならない事を注意深く探した。 ニュース番組が気になってしょうがない。 それが時太郎の妄想に必要な素材にも なるからだ。タバコに火を着けて仰向けになった。 昨日の坂本が言っていた事を考えた。 時太郎は腑に落ちない事がいくつか あった。坂本の大袈裟な謝り方とあの 異様なまでの変わりようだ。坂本が自分に 対して謝る事は絶対にあるとは思えない。 例え辞める事で改心して最後ぐらいは 謝ろうという気持ちになるのは普通の 人間性を持った者だけであって、坂本に 関しては人間の心が無い。どんな事がこれから起きようとも 辞めさえしてくれれば今までの事は水に 流せる。それは間違いない事だ。  時太郎は天井を見ながら自分の事を 考えた。友達は一人もいないし悩みを打ち 明ける事も会話すら出来ない。寂しいと 思う事は時と場合によっては有るのかも 知れないが友達が居ない事で特に辛いと 感じた事はなかった気がする。
/417ページ

最初のコメントを投稿しよう!