君の温もり(ショートストーリー)

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無機質な機械音は私の眠りを妨げた、いつもならこんなこ煩い機械に起されることなく目覚めている、今日に限って私は機械のお世話になることになってしまったようだ。 機械音がやけに頭に響きズキズキと神経を刺激する、まさに朝の気分は最低最悪、鳴り止むことにない目覚ましのスイッチを伸ばした右手で切ると力が入れた傍から抜けるように指先から崩れ落ちた。 「・・・っどうやら、風邪のようね」 何度もこの倦怠感は経験している、ベットに両手を突いて身体を押しどうにかやっとと身体を起こして見てもいつものように思考が上手く回らない。 こういうときに限って一人暮らしの不便さを実感する。 学校に行かなくてはと思うものの私の身体は鉛のように動くことを拒み私もさすがに今日はと諦めた。 時刻は六時半、とりあえず李瑚にメールで休むことを告げた。送信しました、無機質な機械が弾きだした文面にほっと胸を撫でアドレス帳をスクロールさせ指を止める。画面には葵の名前。 こういう時は恋人に連絡するものだろうか?でも無駄に心配させるのもましてや葵のことだ、連絡すれば必ず学校休んでも来てしまうだろうと思いそのまま携帯を閉じベットに横になる 眠りに付こうとするも倦怠感から熱が生まれ私の身体を支配していき寝付ける訳などなくもう一度身体を起こすとベットから両足を下ろし立ち上がるとふらつく身体を所々にある壁やチェストで支えながらキッチンまで歩き冷蔵庫からアイスノンを取り出す、薬でもと思ったが最悪のタイミングで切れていることを知っていた。 アイスノンにタオルを巻きそれを抱えベットに吸い込まれるように私は身体を預けた。 「・・一時間目始まった、李瑚のことだもの・・葵には上手く伝えてくれる筈。生徒会は神楽君が居てくれるからきっと」 静かな部屋に時計の針が進む音、カーテンが風に揺れて擦れる音近くを子供や車が走る音が響く、病に倒れたときほど一人が辛く寂しいものに感じる、両親が私を残して海外転勤することになった日の夜と重なった。 大丈夫と笑ってみせた、でも夜がくると寂しさは姿を現し私を縛りつけた、一人には慣れて居た筈だった。
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