第四章。

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製氷機の前にいる既に酒の入ったマスターを横に退け、黙々と注文をこなしていく。カウンターに座る客に酒を勧められるがそれを丁重に断った。 「あの。」 「はい?」 ざわめきの中でもよく通る声だ。顔を上げた先はカウンターの隅。女が一人。 「おかわり、お願いします。」 「はい。」 空のグラスを受け取り伝票を確認した。カシスオレンジ。このおかわりで三杯目。この店は来店の時刻を伝票に記入している。時間は20:15。一時間に一杯ペースだ。 問題なく作り上げたそれをまた、女性客の前に差し出した。 「ありがとう。」 「ごゆっくりお楽しみください。」 決まり文句を告げる。 少し高揚した頬。一つに結んだ髪の毛を上で纏めてある。落ち着いた色のワンピースの前を一礼してまた裏に戻った。 .
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