第一章

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父さんと母さんが死んだ。 良く晴れた冬の日だった。俺は前日風呂上がり、髪を乾かさずに寝たせいか風邪を引いていた。 その日は本当は家族三人で遊園地に行く筈だった。いつも仕事で忙しい父さんが、俺のワガママの為に更に仕事に打ち込んで、漸く手に入れた休日だった。せっかくの休みに風邪を引いた子供の俺は全てを恨みの対象にして。 「違う!」 膝に乗せられたお盆を手で勢いよく払った。母さんが持ってきてくれたバニラアイスとオレンジジュースがフローリングを汚した。 「僕が飲みたいのはリンゴジュースだよ!アイスもバニラじゃなくてチョコが食べたいの!」 「でも奏日、チョコのアイスもリンゴジュースも買いに行かないと…。」 「じゃあ買ってきてよ。」 オレンジジュースが入っていたコップは床で砕け散っていた。母さんは困った声で、風邪の俺を置いては行けないと言う。それにまた俺は頭にきて、母さんを睨んだ。 「遊園地に行けなかったんだからそれくらいいいじゃん!父さんの車で行けば直ぐだろ!早く買ってきてよ!」 言い逃げも良いところだ。布団を頭まで被って、全てを遮断する。頭から被る布団は俺にとっての結界だ。母さんの言葉も外からの光も何も感じないように。 .
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