第一章

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「千夏。」 父さんは母さんの事を名前で呼ぶ。ドアが開く音がして足音。部屋に入ってきた父さんに肩が跳ねた。 どこの家庭でも親父と言うものは威厳があるものだろう。俺の家でもそれはそうで、コップまで割っていた俺は父さんに叱られるのが恐くて布団を強く握った。 布団のせいで二人の話し声はよく聞こえない。ただ、父さんの声音に怒りの感情は含まれていなかったから、二人にはバレないように小さく安堵の息を吐いた。 「よし奏日!」 ぽん、と。布団の上から父さんの大きな手の感触がして、また俺の肩が跳ねた。それに気づいたのか、顔は見えないが父さんが小さく笑った気がした。 「今すぐ父さんと母さんがお前の大好きなアイスとジュース買ってきてやるからな!ちょっと待ってろよ。」 「じゃあ、ちょっと行ってくるからね。」 そう言って出ていった二人の背中すら、俺は見ていない。そのまま俺は布団の温もりと熱のダルさも手伝って眠ってしまった。目覚めたのはしつこく鳴る電話の着信音でだ。時間は二人が出かけて三時間弱が立っていた。 .
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