第一章

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布団から出るとひんやりした空気が俺を包んだ。一度身震いしてリビングで煩く喚く電話を止めに階段を降りた。 暗い室内で赤くボタン光っている。着信音は鳴り止まない。フローリングの床が冷たくて、スリッパを履かなかった事を後悔した。 「もしもし柞永です。」 『あ!やっとでた奏日くん?!』 受話口から聞こえる声はどこかで聞いた事のある声だ。相手は随分興奮している。頭に響く大きな声に治まっていた頭痛が戻ってきた気がした。 『落ち着いてね!落ち着いて聞くのよ!』 「はい…。」 焦りの中にある動揺が俺に伝わってくる。震えた声で告げられた内容に頭が真っ白になる。フローリングに落ちた受話器が発した音が、自棄に遠くから聞こえた気がした。
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