第二章。

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ノートの間に挟んだボールペン。隙間に親指を入れてそのページを開く。 ノック式のそれの芯を出して、先ず今日の日付を記入した。一段下に『奴』が言った言葉を書き込む。 「『其所にはもう一人、別の誰かがいる。』だったな。」 顎でボールペンの芯をしまって考える。 「…別の誰か?」 てっきり一人だと思っていたのに、久しぶりに少し驚いた。『誰か』とは『誰』なのか。 「…はっ」 まぁ考えても仕方ない。おそらくは看護師か医師かのどちらかだろう。 ボールペンをまたノートに挟み、元の場所へそれを放る。時計を見れば彼はバイトまでもう然程時間が無いことを語っていた。 干しっ放しにしてあるジーンズとシャツをハンガーから外して着替えを済ませる。今朝バイトから帰って来たときに置いたままにしてある鞄を肩に提げて電気を消した。 「早死にとは解ってても、金が無いと生きてけないからな。」 言い聞かせるように呟きながら玄関に向かう。靴を履きながら、重たいドアを開いた。 .
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