花束はいつか枯れ、捨てられる。

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目の前で僕の恋慕が解体されていく。 白く、華奢な四肢は生気なくだらんと投げ出されている。 ライトに照らされ、美しい。 既に、冷たくなった手に手を絡ませる。素手で。 例えば僕は、この手がこの手を強く握り返してくれればいいと思った。 悲しみが、僕の愛した人の、最早脱け殻となったそのからだの、その顔。 見ていた好きな映画を一時停止させたように固まって動かないその顔から、悲しみが。 悲しみというやつ、どうやらうつるらしいな。 シェイクスピアは戯曲にそう語らせた。 今の僕にも一時停止の悲しみがうつっている。 例えば、ごわごわとしたその陰毛も愛しい。 ただただ、その性器をみるとまるで僕の性器は萎れていく。 変だった。 それを妄想するだけで熱く、固く、狂おしく、たぎり、求めていたはずの僕の性器が、実物を前にして萎えている。 まるで僕の股間には巻き戻しがかけられたみたいだ。
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