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いくつかの言葉が意味深に聞こえる。
それを静かに楽しむ壱帷だ。
騒がしいと思いつつ聞き流していた沖田は目を瞬いた。
前を行く近藤が振り返る。
眉を下げて困った顔をしていた上司に壱帷と沖田は察して原田を睨みつけた。
(近藤さんになんて顔させるんですかこの木偶の坊)
(おたんこなすだなぁ。近藤さんを困らせると許さないよ)
二人の瞳がカッ!と光る。
それを受けは原田は顔を真っ青にさせた後、肩を震わしぼろぼろと涙を零しはじめた。
大粒の涙に永倉はぎょっとする。
同時に、かなり情緒不安定だなと同情せずにいられなかった。
永倉は藤堂と仲が良いとはいえあまり一緒にいなかった。
それは深い絆故、安心してそばを離れられるからだ。
だが原田は違う。
一見分かり難かったが、二人が一緒にいるというより原田が藤堂についていく感じなのだ。
相当に懐いていた。
今はその“飼い主”がいないのだ。
べそべそと泣く原田にいらっとした壱帷は舌打ちをした。
この状態で空気を読まぬ彼女に全員が眉を潜めた。
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