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遊郭は男の行く場所であって、女が行く場所でない。
女が入って良い場所ではない。
「なのに、女と知ってなお遊郭に誘うとは何事です」
両の腕を引っ張られ、島原へと向かう道を歩いていた壱帷はうんざりした表情を浮かべていた。
壱帷の腕を引く藤堂と原田はどことなく楽しそうでいて何だか頭にくる。
「ままっ壱、男装してんだからバレねーって。遊んでこうぜ?」
「だったら別に遊郭じゃなくてもいいでしょう」
にやにや笑う原田をぎろりと睨みつける。
それでもされるがままに動く壱帷に、後ろから着いて来ていた永倉がため息をついた。
「タダで飲み食い出来んだ。良いだろうが」
「まぁその点に関しましては。でも、あまりそう言う所ばかり行くようなら井上さんに告げ口しますよ」
彼等と同じ新撰組幹部、井上源三郎の名を出すと永倉は鼻で笑った。
原田と一緒に壱帷を引っ張る藤堂も何故だか面白そうに笑う。
「源さん?源さんねー…。確かにあの人はおっかないよ」
「だがしかし!源さんにはもう怒られ慣れた」
原田の言葉と共に、はっはっはと笑う三人。
壱帷は呆れて嘆息した。
「それじゃあ…………山南さん」
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