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もがく壱帷を見て松陰は得意気な顔をしたのだった。
そうだ。何時だって私はあいつに勝てなかった。
それはとても悔しくて悔しくて、亡くなって何年たとうが何時も松陰がついて回った。
「私はいったい、何時になったら松陰を忘れるのでしょうね」
幾ら恨もうとも仇を討とうとしても意味がないのに。
その時ふと近藤の顔が過ぎった。
桜の花びらの中に堂々とたち、飯を差し出すその姿。
思い出して顔が緩んだ。
(与太郎…もしまた来る事があったら、小姓として推してあげてもいいでしょうね)
壱帷は湯呑みを洗うと勝手場を出ていった。
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