614人が本棚に入れています
本棚に追加
/78ページ
「平助ぇ」
それはまるで怨霊の囁きのように、耳の触れてくる友の名。
「平助ぇ…」
朝も、昼も、夜もずっと追いかけてくる涙混じりの声。
「…平助ぇ」
この囁きのせいで今日も一段と暑苦しい。
全く。
今に始まった事でないというにこの幽霊はいつまで落ち込んでいるつもりなのか。
「うおお…!平助ぇぇえええ!」
「っせぇ!母親とはぐれた餓鬼か手前ぇは!」
数歩と離れずぴったりくっついてくる偉丈夫に振り返り頬を叩きつける。
苦悶していた原田は永倉の喝にべそべそと涙を拭いて鼻水をすすった。
「んだよ、新ぱっつぁんだって平助いなくて苛々してんの知ってんだかんなオイラ」
「だったら余計苛立たせんな。鬱陶しい」
最初のコメントを投稿しよう!