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「捨ててきなさい」
そこに、どーんと谷底へ突き落とすような言葉を突きつけたのは壱帷だ。
すると原田はこの世の終わりといった顔をした。
大袈裟過ぎだ。
「っ…んでっ!!?」
「なんでじゃないでしょう。私達が食べていくのに一杯一杯だというに、それの餌をやる余裕なんてありませんよね。原田さんアナタ御飯減っても文句言わないんですか?」
「んな事しなくてもオイラの給料から出す!酒を控える!」
「土方さんやサンナンさんに文句言われ続けて睨まれても耐えられるの?」
沖田の問いに原田はぎこちなく頷いてみせる。
「お、鬼と般若の説教など右から左へ、き、き、聞き流してやっぜ」
「なんの話だい?」
その時、原田の魂が口から飛んでいった。
同時に壱帷と沖田の頬の血色が良くなる。
「近藤さん」
壱帷が突如現れた男の名前を呼ぶと、永倉が居心地悪そうに身じろいた。
ヘイスケを隠すように抱えて丸くなっていた原田は疾やる心臓を押さえて振り返った。
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