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それでも動じない壱帷は苛立ちを表すように飛燕の柄頭を指で叩く。
「原田さん、アナタ今藤堂さんがいなくて辛い思いをしてるんですよね?だったらその犬や、いるかもしれない飼い主も同じ気持ちなんじゃないですか?」
原田の涙がぴたりととまった。
不意をつかれたらしく目を瞬く。
壱帷は鼻を鳴らすと袖を翻した。
先へ進む壱帷を見つめていた永倉は呆然としてしまった原田を見上げる。
「いくか?」
尋ねると原田は黙って頷いた。
「それで、探すっていったいどうするつもりなの?近藤さん」
「うむ、まずはお武家様からと思ったが…」
「相手にされないでしょうね。でもそんな綺麗にされた仔じゃないですよこの犬」
「ヘイスケ!!」
「はいはい。……このヘイスケ」
野犬だと思うがヘイスケは人に馴れすぎている。
やっぱり飼われているのかもしれない。
その時何事か閃いた沖田が手を叩いた。
指を立てて近藤に向く。
「子どもに聞いてみましょう」
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