寂しがりなライオン

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  *** 「おいしいですねー! わたし、スタバって初めてなんです!」 目の前に座る女はそんなことを口にする。 結局、オレがここまで案内する羽目となり、そのまま無理やり奥の座席まで連れて行かれた。 ストローを口にくわえ、甘ったるそうな生クリームの乗ったコーヒーを飲む女に、オレは奢られたブラックコーヒーを口に含む。 「でもブラックですか……大人ですねー……あ、大人の方ですか?」 「……19だ」 “あ、同い年だ!”と笑う女にオレはまたコーヒーを口に含む。 何を話したらいいのか分からない、というのが正直な気持ち。 無理やり振り払えばよかったのに、“久しぶりに見た笑顔”に何も出来なかった。 ズーッと音をたてて飲む姿は幼く見える。 それを口に出して言ってやれば、 「別に気にしません。わたしには周りが見えないんで」 などと言う。 それからしばらく女が一人話し続け、一段落つくと、“ふう……”と小さく息をついた。 「──ありがとうございました」 「は?」 突然、また脈絡なく謝られた。 意味が分からないと言えば、女は笑顔で口を開く。 「嬉しかったんです。助けてくれて。ほら? わたしって目が見えないでしょう? 杖をついて歩けばみんな離れて行くし、人に当たるとすれば、当たった相手は舌打ちして行っちゃうんです。だから助けてくださって嬉しかった。立ち去らずにいてくれたことが嬉しかったんです」 笑う女にオレはまた言葉をなくす。 そして“そうか”と一人で納得する。  
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