紙一重

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胸が抉れる様に痛い 俺は包丁を持っている それで部屋を切り裂いた あの人はカッターを持っている それで自分の腕を傷付けた 俺は顔を歪ませた あの人は顔を歪ませて泣いた 生きていたくないんだ 早く死んでしまいたいんだ これが 二人の口癖だった 俺はこの世に憎しみを持っている あの人はこの世を愛している でも 此処には居たくなかった 俺は全ての人間を嫌っている だから 独りだった あの人は全ての人間を愛している でも 独りだった だから 二人 愛し合った 二人 身体を 寄せ合った でも 心は満たされない 俺は どーして と 問い掛けた 寂しさが募り過ぎた と あの人は言った あの人の方が 一枚上手らしい その 寂しさが 消えるくらい生きたら 満たされるのか と 俺は問い詰めた いいや 此れからも 寂しさは募ってく 寂しさはいつも前を走ってる あの人は やはり 寂しそうに言った 幸せの 勝てる事のない寂しさとの追いかけっこ あの人は続けて そう言った なんだ それなら そう それなら 死んだ方が早いんだ -
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