アイドル

2/15
前へ
/79ページ
次へ
真夏日。   少年が一人、自動販売機でジュースを買おうとしていた。   転がり落ちてきた缶に手を伸ばしたとき、鈍器で後頭部に痛烈な一撃を喰らった。   彼が攻撃的な性格だったら、同じ打撃を相手に返してやろうと思ったところだろう。 しかし、彼は温厚な性格で、その上、報復ができるような状態ではなかった。   時々閃光が走る暗闇の中、きなくさいようか臭いを鼻の奥に感じながら、意識とは関係なく肉体はふらついていた。   うなじが血で赤く光り、着ているTシャツの襟首をじんわり赤褐色に染めている。通行人が通り掛からなかったなら、彼はそのまま息を引き取っていただろう。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加