第一章 さよなら

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「さよなら」  頭の中で反芻する言葉。好意を寄せてくれた人に対して捧げた言葉。そのこと、そのことしか僕の頭にはなかった。それしかなかったのだ。そんなぼんやりした頭だったからだろうか、それとも、それが僕の運命だったのか、それは定かではない。しかし、これだけは定かだ。この日、僕は死んだ。その事実だけは変わらない。  死ぬと言うことは思いのほかあっけない。ほんのちょっとしたことで簡単に生は失われる。ちょっと打ち所が悪かっただけ。ほんの少し当たりどころがずれていたならば、こういうことにはならなかったでしょう。  そう、運が悪かっただけ。最悪に悪かっただけ。  しかし、運が悪くてよかったと思ってしまった。何故か、思ってしまった……。
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