第一章 さよなら

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 気がつくとよく分からない場所にいた。初めて見る景色。見たことも想像したこともない景色。足下に広がる青。足下を流れる雲。辺り一面に並べられたら岩。きちんと綺麗に整列しているそれは、一つ一つの形こそ歪だが、その歪さまでが計算されているかのような、全体的な集合的美しさがあった。足下の青さが目に沁みる。 「嗚呼、懐かしいな」  不意に言葉が零れた。  此処へは初めて来た。しかし、既視感が収まらない。 「嗚呼、帰ってきたんだ」  零れ続ける言葉。止められない。 「帰ってきたんだ。此処に……この、終わりと始まりの地に……」
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