21人が本棚に入れています
本棚に追加
とりあえず、どうしたもんか。このまま見逃してくれそうにもないし、かと言って逃げ出す力も戦う力も今の俺には残ってない。HP残り1。瀕死状態だ。
「おぉそうだ。じゃあこうしよう。」
わざとらしく猫屋敷先生が相槌を打つ。
「もう二度と私に攻撃などできないように、二度とその拳で誰かを傷つけられないように、心身ともに文字通りボロボロに折るっていうのはどうだろうか。フフフ、さすが私だ。何という愛のある教育だろうか。これで君は世界一優しい人間になれるんだ。」
なんかめちゃくちゃ恐ろしいことをめちゃくちゃいい笑顔で語っている。冗談じゃないぞ。マジでこいつはやばい。
「じゃあまず手始めに・・・・・・・・・・・・・両腕両脚を、折ろうか。」
猫屋敷先生が俺に近づき、腕に触れる。
「大丈夫。気骨は折らないであげるからね。少しの辛抱だ、痛みも教育には必要不可欠だからね。」
あ、やべぇ。入学早々死ぬかなこりゃ。やり残したこともたくさんあるのに。やりたいこともたくさんあるのに。まだ・・・彼女に思いを伝えてないのに。
「れっつ、骨折り♪」
ちくしょう・・・。
と、本当なら俺は全身複雑骨折によるショックで死んでしまい、この小説もわずか数十ページという短さで終わってしまう・・・はずだった。
だけどそんなわけないだろ。
だってこれは小説。いつだってベタにドラマチックに物語は進むのさ。
「すみません、入学式の会場はどこでしょうか??」
そう、後もう少しで俺の骨が折られてしまうそんな状況で、そんな声がした。
猫屋敷先生は驚き、俺も驚いた。そこにいたのは先程の少女。胸の名札には「一年三組 幾歳月 針子(いくとしつきはりこ)」と書かれていた。
最初のコメントを投稿しよう!