第一話、車木零時

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別に今する必要はないし、聞かなくたってみなさんにはまったく支障のない話なのだが、せっかく話すので聞いてほしい。 簡潔に言おう。 俺は恋をしたことがない。 生まれてこのかた十六年間、一度も女子に心ときめくなんて場面は存在していなかった。(だからといって別に男にときめくというわけでもないが) いくら可愛い女子が隣の席に座っていようと、いくら巨乳の女子が露出度の高い服を着て乳房をアピールしていようと、いくら春風が目の前の女子のスカートをめくり勝負パンツの赤ティーバックが目にはいろうとも、俺のあらゆる部位はまったくみじんも反応を示さなかった。 別に女が嫌いなわけじゃない。 グラビアなんかは友の付き合いでよく見るし、今までに何度か交際したことだってある。 しかしそれは、俺にとってはただの挑戦にすぎなかった。 ひょっとしたら今回こそはちゃんとした恋ができるかもしれない!!・・・と、淡い期待を胸に俺に告白してくれたその女子を精一杯好きになろうとした。 でも、無理だった。 手を繋いでも、抱き合っても、キスをしても、そんなのは愛を示す行為ではない。ただ触れあっているだけだ。気持ちは少しも揺れ動かず、俺は俺のままだった。
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