第一話、車木零時

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自分で自分がわからなくなった。ひょっとしたら自分は前世で何か罪を犯してしまったために、恋のできない体質になってしまったのではないか。なんてことを、幼かった俺は無い頭で真面目に考えていたが、今はそんなことで悩みもしない。 人間、歳を重ねるごとにあらゆることがめんどくさくなる。それと同じ。悩むことがめんどくさくなってしまったのだ。 悩んだところでなんだというのだ。この体質が治るわけでも、俺が誰かに恋をするわけでもない。なら考えなくてもいいんじゃね??つかめんどくせぇや。と、そういうことだ。 恋ができないからと言って、特に困ることもない。だったらこの体質も別になんの障害でもない。おまけみたいなもんだ。 世の中には俺みたいな変わってる奴が何万人もいるんだ。その中の1人ってだけで何も変わらない。俺は俺だ。 もう恋をしたいなんて言わないよ絶対。 しかしだ。 しかし、まったくもって予想もしていなかった事態が訪れた。それは突如現れて、それは俺の前を通り過ぎ、それは俺の心を・・・ときめかせた。 車木零時、十六歳、春。 最初で最後の恋に出会った。
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