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桃色の花びらが舞い踊る4月初旬、温かな気候の中、俺は生まれて初めて恋に落ちた。否、墜ちたのだ。
普通の少女だった。
髪は漆黒のロングヘアー。真綿の様に白い肌によく似合っている。服装は俺が入学する高校の女子用制服。赤いリボンが同学年だということをあらわしている。(男子はネクタイ)
ぱっちりと開いた丸い瞳に風に遊ぶ長いまつげ、桜色の唇、俺の胸あたりまでしかない身長、華奢な体躯、最後に額の市松模様の眼鏡。どこにでもいそうな、しかしどこにもいなそうな少女だった。
どうしよう。どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう。息苦しい、顔が熱い、胸が裂けそうなくらいドキドキして、気持ちが高ぶる、反応してしまう。なんて、なんて愛らしいんだろう。どうして名前も知らない少女のことを、こんなにも愛しく思えるのだろうか。わからない、わからないが愛らしい。わからないが愛しい。自分はどうしてしまったのか。生まれてこのかた一度も恋をしたことがないこの俺が、人を愛することを知らなかったこの俺が、今まさに人生初の恋に胸を躍らせているなんて。
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