第一話、車木零時

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こういうとき、どうすればいいんだろう。人を好きになったら、まず何をするべきなんだろう。今まで付き合ってきた子たちは、俺にどうしていたっけ。 思い出す。そうだ。一言言えばいいんだ。「好きです」。と、ただ一言伝えればいいんだ。 だがしかし、いきなり見ず知らずの男から好きですなんて言われたら、彼女はきっと気持ち悪がるのではないだろうか。不審者だと思われて、警察に通報されてしまうのではないか。それは最悪だ。彼女に思いを伝えないまま監獄に入るだなんてできるわけがない。どうしよう。 こうして悩んでいる間にも彼女は行ってしまう。どうしよう。どうすれば。 何を迷っているんだ?? そうだ。俺は何でそんなことで迷っていたんだ。そんなことはどうでもいいことなんだ。好きで何が悪いんだ。愛することは罪じゃない。伝えるんだ、この思いを。伝えるんだ、好きですと。 俺は駆け出す。少女のもとへ。 もともとそんなに離れた距離ではなかったのですぐに追いつける。もう腕を伸ばせば触れられる距離だ。 俺はひとつ深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。 よし、行け俺!! 「あ、あの・・・!!」 腕を伸ばし、彼女の肩に触れた。
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