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***      ドブネズミ  「どうやら溝鼠が迷いこんできたようだね」  おれが意識を取り戻した場所はまったく知らない屋敷の庭だった。 青々と生い茂る芝生に倒れ込んでいたらしく、鼻には芝やら花やら土のにおいが香ってくる。 なのにどうして血のにおいがするのだろう。 まるでおれが人殺しのようじゃないか。  「人を殺したのかい」  優しく冷たい声色。  「殺してない」  「汚いね……はやくお上がり」  どうして匿ってくれる。 もしかしたら、本当に殺したかろしれないのに。  あなたは一体誰なんですか?  どんな顔をしているのですか?  目頭が熱くなり、雫を溢していた。  「泣いてはいけない」  雫を拭ってくれる。 優しくて冷たい手は心地がよい。 おれはまた意識をとばした。  これが出会い。 そして、おれの人生は少しずつ変わっていったのだ。 .
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