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千鶴が目を覚ますと、目の前には斎藤がいた。
「?!さ、斎藤さんっ」
慌てて身を起こそうとするが、それを阻止されてしまう。
「熱がある。横になっていろ」
冷静な判断だろう。
斎藤は、千鶴が何故熱があるのか知っていた。
昨日、二人は雪が降り積もった外にいた。
おそらく『風邪』だろう、と斎藤は判断したのである。
無理をさせまいと、千鶴の看病していた。
大人しく横になったまま、千鶴は斎藤を見つめる。
それに気付かない斎藤ではない。
「…どうした?」
「あの、私風邪引いたんですよね…?私と居たら、風邪移ってしまいますよ?」
「気にするな。俺はお前より体は強い」
千鶴は優しく真っ直ぐな性格だ。
自分よりまわりを心配する。
そんな千鶴に斎藤は、優しい顔をする。
いつもの冷静な斎藤とは別の千鶴にだけ見せる斎藤。
その姿に千鶴は微笑む。
「斎藤さん、手を繋いでもいいですか?」
無言で斎藤は差し出された手を繋いだ。
斎藤はいつものふりを続けているが、千鶴の前では揺らいでしまう心に、度々戸惑う。
そんな斎藤に気付かずに、幸せな時間を過ごす千鶴だった。
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