第一幕

2/2
前へ
/6ページ
次へ
千鶴が目を覚ますと、目の前には斎藤がいた。 「?!さ、斎藤さんっ」 慌てて身を起こそうとするが、それを阻止されてしまう。 「熱がある。横になっていろ」 冷静な判断だろう。 斎藤は、千鶴が何故熱があるのか知っていた。 昨日、二人は雪が降り積もった外にいた。 おそらく『風邪』だろう、と斎藤は判断したのである。 無理をさせまいと、千鶴の看病していた。 大人しく横になったまま、千鶴は斎藤を見つめる。 それに気付かない斎藤ではない。 「…どうした?」 「あの、私風邪引いたんですよね…?私と居たら、風邪移ってしまいますよ?」 「気にするな。俺はお前より体は強い」 千鶴は優しく真っ直ぐな性格だ。 自分よりまわりを心配する。 そんな千鶴に斎藤は、優しい顔をする。 いつもの冷静な斎藤とは別の千鶴にだけ見せる斎藤。 その姿に千鶴は微笑む。 「斎藤さん、手を繋いでもいいですか?」 無言で斎藤は差し出された手を繋いだ。 斎藤はいつものふりを続けているが、千鶴の前では揺らいでしまう心に、度々戸惑う。 そんな斎藤に気付かずに、幸せな時間を過ごす千鶴だった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

164人が本棚に入れています
本棚に追加