1人が本棚に入れています
本棚に追加
『なぁ三年生を送る会出ないか?オレ三年生だけど』
僕の通う群馬県高崎市のとある高校は三年生を送る会に三年生が出演してお祭り騒ぎをするのが通例だった。
『良いよ~何やる?』
軽い返事をしたのはショコちゃん、彼女は二年生、同じ軽音楽部の後輩。
少し気になる存在。
でも恋心とは程遠い感情…でも、そばに居てほしい存在。
『何か定番なヤツと…オレらが楽しめる曲やりたいね!』
『じゃあ林檎ちゃんやるのは確定~てかくまさん林檎ちゃんやりたいんでしょ?素直に言いなよ~』
なぜか彼女は、いつも僕の核心を突く。
仲良くなった頃からずっとそうだった。
『バレてますなぁ…定番曲はショコちゃん決めていいよ』
『考えておくね!』
秋も終わりを告げる11月末の事。
暖房器具すらないかび臭い部室で僕達は笑いながら話をしたり、ギターを弾いたりしていた。
『オレもソロで出る予定♪』
『何やるの?楽しみ!』
『まだ内緒さ』
本番は2月…約二ヶ月、毎日練習しないと気が済まない僕と、音大に進学希望のピアニストのショコちゃんには充分な時間だった。
週に一度の合わせがドンドン楽しくなり、週に一度が二度に二度が三度に…
ほぼ毎日に変わるのも時間の問題であった。
卒業後もバンドは続けたいねと言いながら送る会の練習曲もそっちのけでオリジナル曲作曲に勤しんだり…
楽しくなればなるほど僕はショコちゃんに惹かれていく。
でも…彼女は後輩でバンドを組む仲間…ちょっかい出すわけにはいかない。
そんなあるとき…
『くま。ちょっと時間作れるか?』
バンドに誘った友人サカモトに誘われた。
『もちろん。どっか行く?』
『ちょっと話が…』
呼ばれるままに真冬の高崎市街地の公園に男二人でやってくる。
『サカモト…お菓子くうか?』
僕は、ポケットからクッキーの包みを出す。
『ありがとう。まぁコーヒー飲めよ』
缶コーヒーを投げて寄越すサカモトは何かを秘めた様子だった。
『くま、ショコちゃん好きなんだろ?』
『ぶー!』
冗談抜きでコーヒーを吹いた。
『きったねーな!オレはマジで聞いてるんだからマジで答えてくれ』
『いや…別に…何だろあの娘は…その、バンドメンバーだし…まぁ可愛いけど…うん』
『どっちなん?少なくとも向こうはくまの事気に入ってるんじゃないかな?』
最初のコメントを投稿しよう!