153人が本棚に入れています
本棚に追加
暗い、暗い校舎。所々にある消火栓の赤いランプが闇をリアルに浮かび上がらせる。
行ったら、駄目。
分かってるのに。あたしは。
分かってるのに――
美術室にあった忘れ物を取り、踵を返した。隣りの部屋、美術準備室が、明るい。
一ヵ所だけ電気が点いているから。暗いから、細い光なのに不釣り合いに、明るい。
それに気がつき漸く聞こえ出した甘く、密やかで、そして断続的な吐息。準備室に続く扉の細い隙間から、あたしは、覗いた。そして、見た。見て、しまった。
岬里亜と絡み合っている、女を。
椅子に座った岬里亜。
その膝の上に座る彼女の腰は断続的に動き服もはだけている。対照的に彼女の服は乱れ一つ無い。
あたしは、動けない。足が固まったように動けない。
逃げたいのに、見たくないのに、動けない。
ビー玉みたいに機能しない目が景色ばかり映し続ける。
最初のコメントを投稿しよう!