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「岩城、大丈夫?」
「ん、あ、夕維」
いつの間にかぼんやりとしていたらしい。心配そうに夕維が見ていた。幼稚園からずっと一緒にいる夕維は、あたしをよく知っている。
男女の割に仲が良いせいか、変な噂ばかり流されるけど。あたし達は気にせずにいつもこんな調子だった。
仲がいい友達でしかない。余り他の異性とは仲がよくないだけで。只昔からいるという、友達。
「あんた、いつも無理すんだから気をつけろよ」
「余計なお世話だ、馬鹿」
「可愛くねぇ~」
うるさい、と相手を睨みつけると夕維が茶色の瞳を輝かせてあたしを見つめていた。
心配そうな色をそこに湛えて。あたしの目を見ている。なにもかも見透かすようなその瞳で。普段の明るさを全く感じさせない瞳で。
「また岬先輩のことか?」
「……違うよ、夕維が心配し過ぎなだけ」
いつの間にか、嘘を吐くのが上手くなったと思う。呼吸をするように、嘘を吐き、笑う。表情を繕う。
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