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「ま、相談くらいなら乗ってやるからさ」
胡散臭そうにみつめるも、小さく頷き夕維が頼もしく笑った。
「頼りにしてるよ、夕維」
「おう、じゃ休憩終わるし、俺部活だから。また」
手を振る相手に軽く手を振り返す。背中を見せた瞬間にあたしは笑みを消していく。あたしは隠し通さなくてはならない。岬里亜に関することは、全て。
だって、軽々しく言えないから。気の良い幼馴染みに心配をかけたくない。
夕維にも悩みがあるのに、あたしの事で悩ませる訳にはいかない。
「――、か」
ぼそりとあたしは呟いた。不釣り合い過ぎる、その言葉を。死ねば良いとか、大嫌いとかは簡単に言えて馴染むのに。
甘ったるい言葉は言えない。
――大好きっ、夕維。ありがとう
幼い頃みたいにあんな風に笑って、意味なく好きだなんて言えない。
簡単に、好きだなんて言えない。
優しい言葉は言えない。
冷たい言葉なら幾らでも言えるのに。
だって、愛なんて儚いから。嘘臭いから。菜穂が何回も経験した、ネット上の『恋』が証明している。
講習が始まってもあたしは窓の外をじっと見つめて、ぼんやりと言うべき事を考えていた。
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