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――私は岩城ちゃんのそういう考え、いいと思いますよ
不意に脳内に彼女の声が響いてくる。去年同じ事を聞かれて答えた時に言われた言葉。あの時私は彼女が嫌いではなかった
無意識の内にあたしは左手に爪を突き立てる。強く、強く。
忘れろと、唇も噛み締めて。
メールをしてからよく思い出すのが不愉快だった。あたしの頭には常に叫びだしそうな衝動が封じられている気がする。
叫んでしまったら、解き放ってしまったらきっと戻れなくなる。
そう感じる位に暗く重い感情。
何かは解らないからそれを放ちたくない。
多分、あたしを透明標本にしたら血管部分が黒いんじゃないんだろうか。
文を書きながら時間を過ごして「岩城ちゃん、部室閉めるけどまだ残る?」の声に我に返った。
「もうちょっと残る」
「じゃ、鍵よろしくね」
鍵を渡されてあたしはまた文を書く。五分程して部員のいなくなった美術室を閉め、あたしは美術準備室の戸を開いた。
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