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いつもの台詞を呟くとあたしは手を伸ばし栗色の僅かにウェーブのかかった髪を指で梳く。仄かに甘い匂いが鼻を掠める。あたしと菜穂はどう見られているのだろうか。
卵型の輪郭に、日本人離れした顔立ち。人形みたいに綺麗な菜穂と、何処にでも有り触れてる只のあたし。無駄に長く伸ばした髪だけがあたしを象徴する。
「ねぇ菜穂、また次の恋を見つけなよ」
「……うん」
菜穂が苦しそうにあたしを見た。失恋をする度、彼女はこんな目であたしを見る。理由は知らないけど。
「でも、綺麗な人だったな……。その人。ちょっと美織に似てる」
「あ、あたしに?」
菜穂がぽつりと呟いた。写真、見る? と問う声にあたしは頷く。
……ていうか直メまでしてたのか。
いや、あたしもしてる人居るから人のこと言えないけど。写真まで交換してないし。
「ね、綺麗な人でしょ?」
そして、あたしは、硬直した。
それはあたしが一番嫌いな人間の写真。菜穂の携帯画面に映っていた彼女は、あたしの知り合いだった。
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