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「美織?」
硬直したあたしを菜穂が心配そうに見つめていた。あたしはそれで我に返ると、呻くように声を絞り出した。
「……この人、知ってる」
「……え?」
「……この人、あたしの学校の先輩だ」
菜穂が硬直する番だった。硬直し、彼女はあたしを見る。只、ひたすらに見る。
「それ、本当に?」
「そんなつまんない嘘、吐く訳ないでしょ……」
あたしは片手で額を覆った。この瞬間、あたしはこうしないとおかしくなりそうだった。
なんだか、嫌な感じがした。以前にもあった、事だから。
数ヶ月前、他の友人が被害にあってたから。
「この人のハンネは?」
ならばまさか、と思いあたしは尋ねる。急に嫌な予感がしていた。
「咲良、だったかな?」
予感的中。見事あたしの勘、大当たり。全く持って嬉しくないけど。
「ねぇ、美織なんでそんなこと」
「……そいつ、あたしが執事やってる子の彼氏役。本来は騎士役だったらしいけど」
無神経かと思ったが、菜穂は興味なさげに「あっそ」と呟いただけだった。
「……腹が立つ。あたし決めた」
「何を?」
「あいつに会って来る。会って、その女癖の悪さ叩き直してくる」
「それは、私の為かな。美織」
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