真夜中の電話

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 気がつけば菜穂の顔がすぐ側にあった。綺麗なその顔が。でもあたしが引きつけられたのは。その目。黒い、黒いその目だった。何か感情を秘めた瞳。期待のような、何かそんなモノを秘めた、瞳。 「……違うよ、あたしの為」  口をついて出た言葉。菜穂が、俯いた。胸が痛むけど、そうしなければ、何かが壊れるような気がした。この関係が。友人というだけで、何もないはずのこの関係が、壊れてしまうような予感。 「あたしは、恋愛はしない。……その分、友人を大事に感じてたい。それで、菜穂達が傷つけられたから、腹が立っただけだから」  言い訳めいた言葉を呟くと、菜穂はもう何も言わなかった。そのままあたし達は黙ってドーナツを食べていた。 その甘ったるさだけを、味わうかのように。何故か、普段は好きなそのドーナツの甘さ。それが妙に喉に張り付いて纏わり付くような感覚がした。
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