断罪

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                川島勝司は、数週間前まで新撰組の伍長を勤めていた男である。  川島は弥兵衛が入隊する以前から隊に所属しており、元治元年の池田屋事変の折には副長土方率いる隊に加わり丹虎方面に趣き、事変後に十七両を賜ったらしい。しかし、川島は生来臆病な性格のようだった。それは或る日の隊務中に明らかになった。  聞くところによると、その日、川島は土方、三番隊組長斎藤一と共に京を巡回していた。寺田屋付近を通った際、三人は路地裏から出てきた長州藩士荒武某、佐々宇津某等四、五人に取り囲まれ切り掛かられた。土方と斎藤は刀を抜き応戦したが、川島は乱戦の最中命からがら屯所まで逃げ帰ってきたそうだ。  この一件が咎められ、川島は〝士道不覚悟〟であるとして土方から切腹を申し付けられた。  川島のこの窮地を救ったのが、誰あろう伊東甲子太郎だった。
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