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(駄目じゃ、伊東先生!そんな事を言うたらいけもはん………!)
弥兵衛は心の中でそう叫んだ。土方が日頃から伊東の快く思っていないのは組の中では有名である。その土方がどのような形で伊東に責任を取らせるかは弥兵衛にも簡単に予想が付いた。
「全ての責任は私にあります。もし川島君が見つからない場合には………然るべき罰を受けましょう。」
弥兵衛の思いとは裏腹に、伊東は土方にそう言った。
「その言葉、忘れるなよ。武士に二言はねぇからな。」
土方はそう言うと、立ち上がってその部屋を後にした。
弥兵衛は伊東の後ろ姿を見つめた。彼はまだ顔を伏せている。
(畜生………。このままじゃ伊東先生が………!)
弥兵衛は手の感覚が無くなる程に握り拳に力を入れた。
慶応二年某月某日の事だった。
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