29人が本棚に入れています
本棚に追加
男の子の魔女裁判の日がやって来ました。
男の子は逃げようと既に決心していたので、小さな隙を鋭い眼で窺っていました。
広場には桟敷(サジキ)が設けられ、公開裁判となります。
貴族の方々が桟敷の席に続々と着きました。
最後にこの国の王様が、輿に乗って広場に参られました。
赤い絨毯の巨大なロールを手で押して、赤い道を作る奴隷の男達。
ラッパ隊が王様が通る警告を奏でます。
絨毯の上を、美しい女達が篭から花びらを撒き散らし歩きます。
そしてやっと、王様の登場です。
屈強の男達が何人も担いで安定した輿に王様は座ってます。
その輿のまま桟敷に納められて、王様は高見の見物です。
これでは間違いなく魔法使いだと審判されて、男の子は火炙りにされてしまうのでしょう。
不運なことに男の子は、みせしめに選ばれてしまったのです。
男の子は涙を拭くフリをして、肩を上げて頬に擦り付けました。
腐った作物の強烈な臭いを我慢しながら、シャツの衿に隠した丸薬を口に含みました。
とても嫌な味がしたのは、腐った作物のかけらが一緒に口に入ってしまったからでしょう。
牢屋に繋がった鎖を外されるのを辛抱強く見てました。
衛兵が牢屋から男の子を出そうと、横に付いた背の低いドアを潜る為に足を折りました。
男の子は衛兵に体当たりを喰らわせて、思いっ切り衛兵の背中を踏み付けました。
反動を利用してジャンプして、そのまま空へ駆け上がりました。
口に含んだ丸薬は、空を飛ぶ魔法の丸薬なのでした。
男の子は振り返らず、空の上を走りました。
最初のコメントを投稿しよう!