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†
無口な青年が海を前にして佇んでいました。
疲れたような、悲しげな瞳の青年です。
無心で海を眺めてました。
青年は魔法使いでした。
かつて
裁判に掛けられそうになり、逃げ出したあの男の子でした。
川に流されて、オンボロの無人の水車に引っ掛かって、命を落とさずに済みました。
水車の石臼の回りに落ちた麦の粉を舐めて、ひと心地ついた男の子は眠りこけて体力を少しだけ回復させました。
水車の車に掬われた魚を捕まえて食べました。
我慢出来ずに食べてしまった
最初の魚は半生で、
でも、
とても美味しくて、生きている事を男の子は実感しました。
それから
ふらふらと当て処ない旅が始まりました。
男の子は旅の最中には人間の嫌な部分を沢山見ました。
その中で一握りの良い部分も見ましたが‥
男の子は人間を嫌いましたが、自ら命を絶つ愚かなことは出来ませんでした。
川で助かった時の魚の味と、魚の命を貰った尊さを男の子は忘れられないのです。
男の子は人間の居ない世界を求めて、何時の間にか青年と呼ばれるまで成長を遂げたのでした。
長身の割にひょろひょろとした体つきで、その薄い身体は骨にやっと肉が付いてる有様ですが、肌には張りがありボサボサな髪はでも、梳かせば艶が出そうなしっとり感が有りました。
黒い衣装を身に包んで、独特の雰囲気を辺りに散らしてます。
乙女が彼を見付けたら全員が全員、頬を染めて恥じらうでしょう。
そんな容姿をしているのです。
尤も、人間が嫌いになった彼には関係の無い事でしょうけど。
そんな
魔法使いで青年な彼が、旅の果てで辿り着いたのがこの海でした。
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