魔法使いの物語

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      † パン屋は休む隙もない程に繁盛しました。 男の子が焼くパンを主人が真似て、様々な味の美味しいパンを店頭に並べたからです。 店頭のパンも材料も余る事が無くなり、男の子は夕方は粉を練る事から始まる、賄い作りに腕を振るいました。 主人に生地の作り方を教えて貰って、新たな作品を作り出す男の子。 主人はそれを見て、翌日には同じパンを店頭に並べるのでした。 ライバル店のパン屋は、客を奪われて店を畳む寸前まで追い詰められました。 男の子が勤めるパン屋の主人は、自分の作品ではなく男の子の作品が売れる事にプライドがズタズタにされました。 このまま、男の子の作品を真似る事に不満と疑問を抱きました。 そして、パン屋の主人同士が結託して、邪魔な男の子を排除しようと、衛兵に魔法使いが居ると報告をしたのでした。 男の子は衛兵に捕らえられて、牢屋に入れられてしまいました。 魔法使いだと民衆に晒す為に、広場の真ん中にわざわざ牢屋を作って、魔法使いを閉じ込める特別な牢屋でした。 魔法使いが逃げ出さない様に、手と足を鎖で繋がれて固定されて動けなくされてしまいます。 魔法使いを恐れた民衆は、牢屋に向かって小石や腐った作物を投げ入れます。 男の子は打ち傷や酷い臭いに襲われました。 魔女裁判では、こんな酷い姿を魔法使いが好み、その異様さが紛れも無い魔法使いだと、理不尽な判決を下して火炙りを命じるのです。 男の子は人々の悪意に晒されて大変傷付き、涙を流し続けました。 人々は何が面白いのか、それを笑うのです。 男の子は人間の愚かさに、心底嫌悪を感じました。     
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